糸花生活研究所 季節の手仕事 ー 秋編① 編み図のない編み物

金木犀の薫る秋晴れの日、我が家に新しい家族がやってきました。
夢中で彼女と向き合ううちに、あっという間に一ヶ月が経とうとしていて、窓の外はすっかり秋の景色です。

朝夕肌寒さを感じ始めると、気になり出すのは 冬の贈り物のことです。
毛糸と編み針を手に取る方も多いのではないでしょうか。
この時期、寒い冬に間に合うように、大切な家族や友人にあたたかな贈り物の準備をはじめます。

季節の手仕事ー秋編
今日は、編み物について、書いてみようかと思います。

私にとって編み物のはじまりは、祖母の手編みでした。
幼い頃は、冬になると毎年、家の中では祖母の編んでくれたチョッキを着ていました。
それは、単純な形で、編み図も教本もない編み物なので、とてもお洒落とは言えないのだけど、なんともあたたかな家庭の手仕事でした。
小さくなったらほどいて、別の毛糸を足して編むので、ボーダー柄になったり…ちぐはぐ。
三歳までをイタリアで過ごした私のアルバムの写真には、可愛いイタリアの服の上に、お洒落とはほど遠い…だけどとても愛らしいチョッキを羽織って、笑顔で写っている姿があります。

中高生になると、本を見たり、母に教わったりしながら、ちょっと凝った編み物に挑戦してみましたが、祖母の編み物のような素朴な手編みをすることはありませんでした。
それが、大学卒業後に留学したスウェーデンでもう一度、あのあたたかさに出会ったのでした。

寮の隣の部屋に、セラミック科に通う母世代の女性が住んでいました。
寒いスウェーデンでの冬、靴下を編みたいという私に、彼女は家に代々伝わるという靴下編みを教えてくれました。
それはやっぱり、編み図も教本もない、手から手へ伝える家庭の編み物でした。
「家族の足に合わせながら、目数を決めていくのよ。私は○目、夫は○目。あなたはもうちょっと小さいから○目くらいかしら…。」
「編み針は、これを使ってるわ。号数はわからないけど、これと同じ太さのものが5本あればいいわ。」
「毎日履くので丈夫な仕上がりになるように、かかとは2本取りにしたり模様編みにしてもいいわね。」
と、毎晩お茶を飲みながら、おおらかな指導をうけました。

家々に伝わっている素朴な編み物は、きっと皆様のご家庭にもあるのではないでしょうか。
そのような手仕事は、おばあちゃんに聞いてみたり、お子さんに伝えてみたり、どうか途絶えないように続けてほしいです。

手仕事が手から手へ伝えられていた時代の名残か、編み図のない編み物は、アンティークの手芸本には沢山出てきます。
スウェーデンで出会った本を参考に、今年は娘のためにカーディガンを編みました。
とても適当な編み方の説明文でしたが、日々の料理をするように 気負わずできる心地良さは、編み物の本来の姿のような気がします。

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